タクト先輩

アオイさん、今月からB社の記帳もお願いしようかな。中古車を海外に輸出している会社で、売上は年間20億円くらい。

アオイ

20億円ですか!大きい会社なんですね。

タクト先輩

社員は10人くらいだよ。車は1台の値段が高いから、売上が大きくなるんだ。あと、社長が会社名義でアパートを1棟持っていて、その家賃もB社に入ってくるよ。前月の会計データを見ておいてね。

(しばらくして)

アオイ

先輩、B社の前月の仕訳を見ていて気になったんですが、売上が毎月1億円以上あるのに、仮受消費税がほとんどありません。

タクト先輩

だいぶ俯瞰で会計データを見れてるね。それはすごくいい気づきで、売上の税区分を見てごらん。

アオイ

ええと…海外への販売は「免税売上」、アパートの家賃は「非課税売上」になっています。でも、アパートの駐車場代だけ「課税売上10%」です。不勉強で恐縮ですが、「免税売上」って初めて聞きました。あと駐車場借りた経験がないので知らなかったのですが、家賃は非課税でも駐車場は10%なんですね。

タクト先輩

免税売上なんて知らないよね、免税売上の免の字も簿記じゃ習わないからね。ちょっと軽く調べてみて。

アオイ

(消費税、課税区分多すぎない…?まずは自分で整理してみて質問しよう。)承知しました、調べながらやってみます!

ポイント

  • 消費税では、まず取引が課税対象か、課税対象外(不課税)かを決める。次に、課税対象の中から、消費税法で限定列挙された「非課税」と「免税」を押さえる。それ以外が8%か10%になる。
  • 取引は売り手と買い手で鏡写しなので、自分が売り手か買い手かで、その取引の税区分が変わることはない(例外あり)。
  • 免税売上も非課税売上も、消費税がかからない点は同じ。ただし申告の計算では扱いが全く違うので、区別が必要。

1税区分は理屈で決まる

日本で買い物をしている限り、「8%か10%」「家賃は非課税で消費税がかからなくてうれしい」くらいの感覚しかないかもしれません。でも実際は、税区分はとても理論的に決まっています。勉強しておけば、どんな取引でも判断できます。消費税は勉強したことがすぐ業務に使えるので、実務とのつながりを感じられて楽しいですよ!

まずは次の図を見てください。

税区分が決まる順番の図。取引が国内で事業として対価を得て行う資産の譲渡・貸付け・役務の提供に当たらなければ不課税(例:補助金)。当たれば課税対象で、非課税に当たれば非課税(例:住宅の家賃、預金の利息)、免税に当たれば免税(例:輸出)、どちらでもなければ8%か10%になる

課税対象かどうか

課税対象かどうかは、その取引が「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け、役務の提供」に当たるかで判断します。

会計事務所でよく見るものだと、国からの補助金は不課税です。国に物を売ったり、貸したり、サービスを提供したりしたわけではないのに、お金をもらっているからです。簿記では「補助金収入」や「雑収入」で計上しますが、消費税では課税対象外、つまり不課税と呼びます。

非課税と免税は限定列挙

課税対象だとわかったら、次は非課税か免税かを確かめます。どちらも、当てはまる取引が消費税法に一つずつ書き出されていて(限定列挙)、それ以外は8%か10%です。

免税を会計事務所で見るとすれば、今回のような中古車の輸出や、エンジニアのお客さんが海外の会社から受ける開発の仕事などです。かなり珍しいと思います。

非課税は、普通のお客さんでも預金の利息などで出てきます。ただ、本業の売上が非課税になるのは、不動産の賃貸事業を営むお客さんや、保険診療が中心のクリニックくらいではないでしょうか。

実際には、非課税も免税ももっと細かく決められています。主なものを図にまとめました。細かいことが気になる方は、書店で入門書を手に取って勉強してみてください。

主な非課税と免税の一覧。非課税は、土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、預金の利息や保険料、有価証券の譲渡、郵便切手・印紙・商品券、社会保険医療(保険診療)、介護・福祉サービス、学校の授業料など。免税は、物品の輸出、国際輸送・国際通信、非居住者へのサービス提供など

2取引は売り手と買い手で鏡写し

取引には必ず売り手と買い手がいます。通常は、売り手から見ても買い手から見ても、その取引の税区分は同じになるはずです。B社が国内の会社に中古車を売れば、B社は課税売上10%、買った会社は課税仕入10%です。

代表的な例外が、一般の個人から車を買い取る場合です。個人のお客さんと取引するたびに「個人事業主として売っていますか、消費者として売っていますか」と確認するのは野暮なので、確認はしません。実は、確認しなくても困らないように消費税法ができています。買い手立場で判断する場合は、売り手の事業性がある前提で課税区分を判断することになっています。

なのでB社の帳簿では、課税仕入10%で計上されます。仕入税額控除の要件は、インボイスの記事で解説します。

一方、売った個人のお客さんのほうはどうでしょう。事業として売っているなら、課税売上10%を認識します。課税事業者なら、消費税の申告も必要です。売上が小さく、消費税を納めなくてよい「免税事業者」なら申告はありません。名前は似ていますが、免税売上とは別の話です。ただの消費者として自分の車を売っただけなら、消費税の申告なんてありませんよね。私たちも、消費者としては申告していません。

鏡写しと例外の図。通常は、B社が国内の会社に中古車を売ると、B社は課税売上10%、買った会社は課税仕入10%で区分がそろう。例外として、個人から車を買い取ると、買い手のB社は売り手が事業として売ったと仮定して課税仕入10%にするが、売り手の個人は事業なら課税売上10%、消費者なら不課税となり、区分がそろわないことがある

このように例外はありますが、基本は鏡写しだと覚えておきましょう。

私がインターンをしていたときは、この当たり前のことがよくわかっておらず、すごく混乱しながら業務していました。私が購入した入門書が悪かったのか、この説明が無かったんですよね。

3免税と非課税は区別する

非課税:消費になじまないものと、政策上の配慮

一人暮らしをしている学生ならわかると思いますが、住宅の家賃は非課税です。一方、駐車場を借りると10%です。

非課税の趣旨は、大きく二つあります。

一つは、そもそも消費という考え方になじまないものです。たとえば土地は、使っても消費されてなくなるものではなく、資本的な財産です。株式などの有価証券の譲渡や、預金の利息もこちらに入ります。

もう一つは、政策上の配慮です。保険診療や介護、学校の授業料などがこちらで、住宅の家賃もその一つです。消費者の負担を減らすために非課税にしてくれています。

駐車場が10%のままなのは、地域によっては必須でも、住まいほど誰にとっても欠かせないものではなく、家賃ほどの配慮はいらないということなのでしょう(これは私の推測です)。なお、1戸につき1台分の駐車場が家賃に含まれていて、別料金を取っていない場合などは、駐車場も含めて住宅の家賃として非課税になります。

免税:消費する国で課税する

免税売上の趣旨は違います。輸出した車を消費するのは海外の人です。消費税には「消費地課税主義」という考え方があり、消費される国で消費税をかけます。海外では、消費税にあたる税金をVAT(付加価値税)と呼ぶ国が多いです。

もし免税の仕組みがなく10%がかかると、B社は消費税納税後に手元に残したい額を起点とし、日本の消費税を上乗せして請求するはずです。海外の買い手は、自分の国の税金に加えて日本の消費税まで負担することになり、消費地課税主義に反します。そこで、輸出は本来は課税対象だけれど、消費税を免除するということで「免税」です。

免税の趣旨の図。もし免税制度がなければ、B社が手元に残したい車の代金に日本の消費税10%が上乗せされ、さらに輸入した国の税金もかかるので、海外の買い手が税金を二重に負担する。免税制度があれば、海外の買い手は消費する国の税金だけを負担する(消費地課税主義)

免税には証明の書類が要る

輸出免税と非課税は、申告の計算での扱いが全く違います。また、輸出免税にするには、輸出したことを証明する書類が必要です。今回の中古車なら、税関が出す輸出許可書です。エンジニアの海外向けの開発の仕事なら、海外の会社(非居住者)にサービスを提供したことがわかるように、契約書や請求書をきちんと残しておきます。

非課税には、こうした証明の書類は特に求められていません。

詳細は別の記事で解説しますが、免税と非課税はいずれもキャッシュだけ見れば全く同じ取引です。法人税でも、売上としての扱いは同じです。ただこの区分を間違うと、B社では納税額計算への影響が甚大です。税務リスク大ですから、よく勉強しましょう!

B社の今月の入力をまとめると、こうなります。

取引 税区分
海外のバイヤーへの中古車の販売 免税売上
国内の中古車販売店への販売 課税売上10%
アパートの家賃 非課税売上
アパートの駐車場代(別料金) 課税売上10%
預金の利息 非課税売上
個人のお客さんからの車の買い取り 課税仕入10%
アオイ

タクト先輩、B社の今月分の売上と仕入れを、税区分を一つずつ確かめながら入力しました。調べてみたら、消費税の区分って思ったより理屈で決まっているんですね。

アオイ

1点ご相談です。海外への販売のうち1件だけ、輸出許可書が資料の中に見当たりませんでした。いったん免税売上で入れていますが、質問リストにも入れてあります。

タクト先輩

よく気づいたね。輸出許可書がないと免税にできないから、お客さんに確認しよう。書類を送り忘れているだけのことも多いんだ。

タクト先輩

免税と非課税の違いが申告でどう効いてくるかは、B社の決算のときに一緒に見ようか。売上が大きい会社だから、区分が一つ違うだけで納税額が大きく変わるよ。

アオイ

はい、ぜひお願いします!それまでに、消費税の入門書をもう少し読んでおきます。