アオイ

本日からお世話になります、大学生の森アオイです、よろしくお願いします。

タクト先輩

よろしくね、所長への挨拶も終わったと聞いているので、早速だけどA社の○月分の記帳をお願いしようかな。
前月の会計データはこんな感じね、あとこれは○月分の資料。

アオイ

前月の仕訳の数500ですか、すごいですね。
これ、私は○月分を何時間くらいで作業すればよいでしょうか?

タクト先輩

だいたい7時間かな。
仕訳の数に驚くのは最初みんなそうだけど、7割くらいは銀行やカード会社から明細連携で入ってくる仕訳だよ。
この7割くらいについては、システムの提案仕訳が正しいか判断するだけでよくて、ちょっと手修正入れたら、仕訳自体は大量に自動作成できるよ。
正しいかの判断は、お客さんから届いている通帳・レシート・請求書・カード明細とか、過去の会計データ見て判断してみてね。
残り3割くらいが1から仕訳入力しないといけない取引で、現金支払とか請求書とかかな。

アオイ

(「明細連携」って何…?あと判断も意外と難しそう。
先輩も忙しそうだからすぐに質問攻めにするのは申し訳ない、一旦自分で調べてみよう。)
承知しました、一旦やってみて改めてご相談します!

A社の1か月の仕訳約500件のうち、約7割が明細連携、約3割が手入力という内訳のイメージ図

ポイント

  • 銀行やカードの明細は自動で会計ソフトに取り込まれ、科目の候補まで入っている。それが正しいかを判断した上で、仕訳を生成させる。
  • 自動の候補は当たるとは限らない。判断には、請求書の控えや売掛金の残高など、お客さんの仕入先・得意先・商流などビジネスの理解が欠かせない。
  • 根拠を持って科目を決められない入出金は、勝手に推定せず、未連携で残すか仮勘定に入れて、先輩への質問リストにまとめる。

1仕組み:明細は自動で届く

最近の会計システムは、お客さんの法人口座や法人カードを会計ソフトと連携することができます。すごいですよね。入出金の明細(日付・金額・カナの摘要)が毎日自動で取り込まれています。

法人口座からの連携については、入金なら借方は銀行預金、出金なら貸方は銀行預金と決まります。法人カードからの連携については、貸方は未払金と決まります。あとは見合いの科目を決まれば仕訳ができます※1が、これはシステムの自動提案か、設定した自動仕訳ルール(摘要に応じて科目を決めるルール)で科目の候補が決まります。

適宜科目を修正して、新人がOKボタンを押せば、仕訳が一気に数百個とか生成されます。

この仕組みを「明細連携」や「自動取込」と呼びます。なお、システムの世界では、システム同士の接続口を意味する英語のインターフェース(Interface)から「IF」と呼び、こうしてできた仕訳を「IF仕訳」と呼ぶこともあります。

銀行口座やクレジットカードの明細が毎日自動で会計ソフトに取り込まれ、科目の候補を新人が根拠資料をもとに判断・修正し、OKを押すと仕訳が一気に生成される流れ図

※1 簿記を勉強した限りでは科目・金額が決まれば終わりですが、実務では消費税が絡んできます。消費税法上どの取り扱いを受ける取引かを判断しないと、実は仕訳が作れません。実は簿記を勉強しただけでは、正確に仕訳1つ作ることもできないのです…!
なお、クラウド会計では税込の金額と税区分(課税仕入10%など)を入力します。税抜経理の会社でも、消費税の部分はシステムが自動で分けてくれます。詳細はこちらの記事をぜひお読みください。

具体的な仕訳はこんなかんじです。

取引 借方 貸方
売掛金の入金 普通預金_三井住友銀行_五反田支店 1,100,000円 売掛金 1,100,000円
クレジットカードの利用(日々のカード利用) 交際費 9,900円(課税仕入10%) 未払金_〇〇カード 9,900円
クレジットカードの引き落とし(月末締め翌月末引き落としなど) 未払金_〇〇カード 255,000円 普通預金_三井住友銀行_五反田支店 255,000円
水道光熱費の口座振替 水道光熱費 330,000円(課税仕入10%) 普通預金_三井住友銀行_五反田支店 330,000円

2自動の候補は正しいとは限らない

例えば「フリコミ カ)ヤマダシヨウテン」の入金があったとして、貸方はどうすればよいでしょうか。売上高?それとも売掛金?

仕入にしても売上にしても、掛取引先のリストは先輩に聞けば手に入るのではと思います。そこに記載のない一見さんについては、請求書の送付時期や過去の会計データをよく見る必要があります。

常連さんの場合

常連さんならば月末締め翌月末払みたいな感じで決済ルールが安定しているので、前月末に売掛金を計上済みの可能性が高いです。その山田商店向け※2に売掛金残高がたしかに残っていることを確認して、次の仕訳を登録しましょう。

借方 貸方
普通預金_三井住友銀行_五反田支店 1,100,000円 売掛金 1,100,000円

一見さんの場合

一覧に記載のない一見さんについては決済ルールが不安定なので、要注意です。もしかすると月初に請求書を送付していて、同月末入金を要求しているかもしれません(一見さんは常連さんより貸倒リスクも高いため、こういうことが全然ありえます)。

請求書に記載の発行日や納品内容、売掛金残高を確認して、次のどちらかで登録します。

確認した結果 借方 貸方
前月以前に売掛金計上済み 普通預金_三井住友銀行_五反田支店 1,100,000円 売掛金 1,100,000円
売掛金の計上が無い 普通預金_三井住友銀行_五反田支店 1,100,000円 売上高 1,100,000円(課税売上10%)

ただし、入金の時点でまだ商品やサービスを引き渡していない(代金の先払い)なら、売上ではなく前受金です。

入金があったときに、売掛金残高の有無、商品やサービスの引き渡しの有無で、売掛金・売上高・前受金のどれにするかを判断し、分からなければ質問リストへ回すフロー図

※2 普通預金には、科目名の後に_三井住友銀行_五反田支店と付いていますね。これは「補助科目」といって、勘定科目をさらに細かく分けるための仕組みです。入所後に必ず耳にする言葉です。
逆に、ここでの売掛金や売上高には_山田商店などは付いていません。ではどこの会社向けかをどう管理するかというと、システム上は明細にいろんな情報を付与できます。取引先を付与する欄、部門を付与する欄、自由記入のメモ欄など、色々あります。売掛金を補助科目で取引先ごとに分ける会社もあれば、勘定科目は1種類のまま取引先の欄で管理する会社もあり、やり方は会社によって違います。
これは習うより慣れろです、難しくないですから、採用前は「ふーん」という感じで大丈夫です!

科目の判断を間違えると、所得や消費税があるべき額から離れてしまい、法人税・消費税の納税額を誤ることになります。お客さんがどんな取引先を持っているか、どういった決済ルールなのか、商流(仕入〜売上)はどうなっているのか等、ビジネスを細かいところまで理解しておかないと判断を誤ります。そしてビジネスを理解した上で、会計・税務の知識を使って正しい記帳を行う必要があります。

記帳代行は会計事務所の王道業務で、おそらく学生インターンが最初にアサインされるのは記帳代行です。かな〜り頭を使いますし、税務リスクに直結するお仕事なので、採用後もよく勉強して臨みましょう。

3分からない明細の扱い

連携された摘要やお客さんからもらっている手元資料を見ても、何の取引か分からない取引はどうしても存在します。そういった取引は勝手に科目を決めてはいけません。

仕訳生成せずに留保しておくか、あるいは一旦何か仮勘定(仮払金や仮受金など)にしておけば、銀行預金残高を通帳と合わせることはできます。

こういった保留事項はまとめたら先輩に質問しましょう。学生が自分でまず考えた上で質問してくれれば、先輩としては大歓迎です!とはいえ考えすぎもダメなので、10分考えても分からない取引は質問リスト行きで大丈夫です!

先輩でも分からない取引はお客さんへ聞くことになります。ビジネスを一番理解しているのはお客さんですから、それでよいのです。私たちはお客さんの回答を踏まえて、会計税務面から正しく記帳できれば100点です。

アオイ

タクト先輩、A社の〇月分、明細連携の仕訳はひととおり登録しました。判断できなかったものが1件あります。それと、消費税の取り扱いに自信のない取引が2件あり、質問リストにまとめました。

アオイ

1件目は〇月△日、サクラ商事からの入金440,000円です。請求書の控えにも売掛金の残高にも見当たらず、過去の会計データにも取引がありませんでした。いったん仮受金にしています。
残り2件は〇月△日国からの補助金入金と、〇月△日に送金した建物購入時の未経過固定資産税について、消費税の取り扱いを確認させてください。

タクト先輩

日付と金額、それに「何を確認して分からなかったか」まで書いてあるから、質問される方としては非常に助かる。消費税の取り扱いは私の方から解説できるけど、サクラ商事は私も聞いたことないので、お客さんに後で聞いてみよう。
初回からこんな上手に質問までまとめられる人、なかなかいないよ。
10分以上迷ったら遠慮なく質問して構わないからね。
引き続き明細連携以外も進めてもらって大丈夫だけど、もう遅いのでまた明日お願い。

アオイ

ありがとうございます!