アオイ

(現金支払の領収書を処理しているけど、コンビニのレシートとか、これ全部雑費でもいいかな?文房具、お茶、切手、収入印紙、茶菓子、ヤマトの送料とか色々あるな。
真面目に区分しないとダメかな、するにしても科目候補が多すぎて判断できない…
あと居酒屋のレシートも結構あるけど、これも雑費でいいかな…)

アオイ

タクト先輩、勘定科目ってどう判断したらいいですか?
切手は最初貯蔵品にして、使う都度通信費に取り崩しですよね?切手台帳ってどこかにありますか?
他にも、居酒屋のレシートもどの科目にするか迷っていて。いざ仕事になると考えること多くて混乱します…(泣)

タクト先輩

先に共有できてなくてごめん、うちの事務所の勘定科目処理要領があるから、まずはそれのリンク送るね。
勘定科目処理要領で規律されていない取引については、過去処理に倣ってね。勘定科目処理要領や過去処理を参照しても判断できないものは、ワンタイムの少額なら雑費にするかな。でも税務上コントロールが必要な科目は不用意に使ってはダメだよ。

アオイ

(勘定科目処理要領ってのがあるのか。あと、「税務上コントロールが必要な科目」って何?
先輩も忙しそうだからすぐに質問攻めにするのは申し訳ない、一旦自分で調べてみよう。)
ありがとうございます、一旦勘定科目処理要領確認して、改めてご相談します!

ポイント

  • 会計基準を遵守しながら、各事務所や各事業会社は、税務も踏まえた社内用の会計ルール(勘定科目処理要領)を設けている。
  • 処理要領にない取引は、過去処理に倣う。
  • 法人税の申告時に帳簿の特定科目(交際費や寄附金など)を集計して、それをベースに所得の調整計算を行っている。そういった特定科目は、取引内容・証憑・税法をよく見た上で使用する。
レシートの科目を決める順番の図。勘定科目処理要領に書いてあればそのとおりにし、なければ過去処理に倣う。過去にもなければ、交際費など税務でコントロールが必要な科目にあたるかを確かめ、あたるなら証憑と税法を見て判断し、あたらないワンタイムの少額なら雑費でもよい

1事務所ごとに「勘定科目処理要領」がある

簿記の試験で、使うべき勘定科目に迷った経験ってほぼ無いのではないでしょうか?

でもそれは「なお、勘定科目は『〇〇』を使用すること」「解答群の中から最も適切なものを選びなさい」といった指示があったからです。実務に飛び込んだ初日、学生は絶対に勘定科目に迷います。以降で、実務の勘所をお伝えします。

会計事務所や事業会社は、たいてい社内用の会計ルールを持っています。この記事では「勘定科目処理要領」と呼びます(呼び名は事務所によって違います)。

企業会計基準委員会などが定める会計基準を守りつつ、その上で法人税・消費税などの税務を踏まえた、実務的な会計ルールになっているのが普通です。どの取引にどの科目を使うかは、だいたいこれを見れば分かります。

「税務を踏まえた、実務的な会計ルール」とは

今回の切手を例に見てみましょう。

簿記の勉強では、切手は購入時にいったん貯蔵品にして、使った分だけ通信費に振り替える、と習ったと思います。月末や期末に切手台帳で残りの枚数を確認して、洗い替えで調整するやり方もありますね。

一方、法人税には、毎期おおむね一定量を買って経常的に使うものは、買ったときに損金(税務上の費用)にしてよいという取り扱いがあります(法人税基本通達2-2-15)※1。そのため、会計の段階から「切手は購入時に通信費」とルール化している事務所がほとんどではないかと思います。

簿記の勉強 実務によくあるルール
購入したとき 貯蔵品 通信費
使ったとき 貯蔵品 → 通信費に振替 仕訳なし
残りの管理 切手台帳で枚数を管理 基本的になし

この取り扱いを受けるには、帳簿の上でも購入時に費用にしておく必要があります(損金経理)。会計では貯蔵品にしたまま、税務だけ購入時に損金にする、ということはできません。税務の取り扱いを使うには、会計のほうを税務に合わせるしかないのです※2。こうした理由で、実務には税務ありきで決まっている会計ルールがたくさんあります。

正直、最低限の税務は簿記講座でも教えたほうがいいんじゃないかと思うくらい、実務では会計が税務に引っ張られています。

こうした「会計が税務に引っ張られる」現象は、逆基準性と呼ばれます。日本の法人税は決算書の数字をもとに所得を計算する仕組みで、切手のように帳簿で費用にしていないと損金にできないルールもあるため、税務のルールが会計の処理にまで影響してしまうのです。

逆基準性の図。会計基準を守って決算書を作り、法人税の所得計算は決算書の数字から始まる。その一方で、税務のルールが会計の処理に逆流してくる。例えば切手は、簿記の勉強では貯蔵品だが、税務の取り扱いを受けるには帳簿でも費用にする必要があるため、購入時に通信費として処理する

※1 期末に使い切れないほど大量に買い込んでいる場合などは、この取り扱いを受けられないこともあります。

※2「これ、会計基準を守っていることになるの?」という疑問はもっともです。ただ有難いことに会計には「重要性の原則」がありますよね。重要性が乏しいものは、本来の厳密な方法によらず簡便な方法で処理してよいのです。企業会計原則注解1にも、重要性の乏しい貯蔵品などは買ったときに費用にしてよい、という例が挙がっています。切手はまさにこれです。

2過去処理に倣う

会計業界は、前例主義が強めの世界です。前に倣えの精神です。

勘定科目処理要領に記載のない取引は、過去に同じ取引があったかを探して、同じ処理にしましょう。これで納品して先輩に怒られることはまずありません。

でも過去処理を参照して、過去処理の誤りを見つけられたら、めっちゃカッコいいですよ!過去処理を鵜呑みにしない後輩、私は大好きです。

3税務でコントロールが必要な科目がある

居酒屋のレシート、1個1個は少額ですが、積み上げていくと何十万円。これを何も考えず雑費にするのは絶対NGです。

居酒屋のレシート:交際費

交際費には税務上の金額基準があり、判断にはレシートの金額だけでは足りません。

  • 誰と飲んだか(取引先か、社内の人だけか)※3
  • 何人で飲んだか(1人あたりの金額を出すため)

お客さんからもらった同席者のリストなどの証憑と、税法の基準をよく見た上で、次のように判断します。

居酒屋のレシートの判断図。社内の人だけなら交際費で、少額飲食費の扱いは受けられないが、全員参加の忘年会などは福利厚生費にできる場合もある。取引先などとの飲食で1人あたり10,000円以下なら交際費(少額飲食費)として損金になり、日付や参加者などを書いた書類の保存が条件。10,000円を超えると交際費(その他)で原則損金にならないが、中小法人には年800万円までの枠がある

「交際費(少額飲食費)」と「交際費(その他)」は申告書に分けて載せる必要があり、所得の計算に直接効いてきます。科目名は事務所によって違いますが、こうした区分ごとに科目が分かれているのが普通です。

※3 なお私の会社では社内交際費は原則禁止です(泣)

4採用前後に法人税の基礎を勉強しておこう

法人税を勉強しておくと、勘定科目の判断を理論的に考えられるようになります。採用前後で、全経の法人税法能力検定(税検)の3級・2級あたりを取っておくと、すごく楽になりますよ。スーパーインターン生を目指してください!

アオイ

タクト先輩、ひとまず勘定科目の判断ができましたので、レビューお願いしたいです!
質問リストにまとめたので、お手隙の際にご確認ください。
その中で、過去の交際費処理がもしかすると誤りかもという案件があり、私の認識違いかもしれないので、そこも確認いただければと思います。

タクト先輩

お疲れ様!最初は科目判断迷うよね、国税庁のサイトとかも見ながらの判断だったと思うけど、これが実務よ。座学と全然違うでしょ。
あと、過去処理の誤りも気にしてくれたとは、素晴らしい。今日中に見ておくね。

アオイ

はい、知らない税務規定をインプットしながらの業務で超大変でしたが、勉強になりました。ありがとうございます!