飲食店Aの10月と11月の帳簿を確認していたタクト先輩は、食材業者Bへの仕入が二度記帳されていることに気づきました。10月31日に請求書から108,000円、11月25日に領収書からもう一度108,000円。アオイが同じ仕入を二回入力していて、仕入は合わせて216,000円になっていました。
タクト先輩アオイさん、食材業者Bの10月分の108,000円は、10月31日にもう仕入にしてあるよ。11月25日は、その買掛金を現金で払った日だね。
アオイあっ、本当だ!領収書を見て、もう一度仕入を入力してしまいました。
タクト先輩仕入を重ねて記帳するのではなく、支払いのときは領収書を確認して、支払いの記録をつけよう。請求書は「この取引の代金を請求します」という書類で、領収書は「代金を受け取りました」という支払いを証明する書類だよ。
ポイント
- 請求書は未払い、領収書は支払済み。同じ取引でも、書類ごとに決済のステータスが違う。
- 仕訳の日付・科目は書類が届いた日ではなく、納品の記録と支払い状況で決める。
- 領収書からもう一度仕入を入れると二重計上になる。気づかずに申告すると、法人税も消費税も誤る。
1請求書は「取引・請求の記録」
請求書には、取引の内容や金額、支払期日などが記載されています。代金を後日支払う取引では、請求書を取引内容や請求額を確認する資料として使います。ただし、請求書が届いた日がそのまま仕訳の日になるとは限りません。商品やサービスを受け取った時期、契約内容、すでに支払いが済んでいるかなどを確認して、記録するタイミングを判断します。
たとえば、飲食店Aが食材業者Bから食材を掛けで仕入れているケースを考えてみましょう。食材は10月1日から31日まで毎日納品され、ひと月分の合計は税込108,000円です。取引先との約束は月末締め・翌月末払いで、請求書は10月31日の日付で作られ、飲食店Aには11月5日に届きました。
仕入れの取引は、納品のたびに発生しています。請求書が届いた11月5日ではなく、10月の仕入として計上します。この事務所では、月末締めの取引先は納品書と照らし合わせたうえで、月末の日付でひと月分をまとめて計上するルールにしています。
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 10月31日 | 仕入高 108,000円(課税仕入8%軽減) | 買掛金_食材業者B 108,000円 |
もし飲食店Aの決算が10月末なら、11月5日の日付で計上すると、10月の仕入が次の期にずれてしまいます。請求書が届いた日だけで仕訳のタイミングを決めるのではなく、納品の記録と支払い状況を確認することが大切です。
2領収書は「支払った証拠」
領収書は、代金を受け取ったことを示す書類です。現金で支払ったときなど、支払いが行われた事実を確かめる証拠になります。
すでに商品を受け取ったときに仕入や費用を計上し、買掛金や未払金を記録しているなら、後日の支払い時に同じ仕入や費用をもう一度計上する必要はありません。支払時は、未払いの債務を減らし、現金や預金の減少を記録します。領収書を受け取ったときに取引そのものを重ねて記帳すると、二重計上につながるおそれがあります。
冒頭の場面で、11月25日に店長が現金で払ったときの仕訳を比べてみましょう。
| 日付 | 借方 | 貸方 | |
|---|---|---|---|
| アオイの入力 | 11月25日 | 仕入高 108,000円 | 現金 108,000円 |
| 正しい入力 | 11月25日 | 買掛金_食材業者B 108,000円 | 現金 108,000円 |
聞いてみれば当たり前の話ではあるのですが、請求書と領収書で、決済のステータスが異なるということです。
仕事をしてみないと請求書と領収書の違いなんて意識することはないのですが、二重計上という一番恐ろしいミスにつながるリスクがあり、法人税・消費税の誤りにもつながります…!よく注意しましょう。
二重計上に気づかずに申告すると、影響は帳簿の中だけでは済みません。仕入が多いぶん利益が少なくなり、法人税も消費税も少なく申告することになります。
領収書しかない取引
10月15日に、店長がホームセンターでキッチンペーパーなど3,300円分を現金で買い、領収書だけをもらったとします。後払いではないので、買掛金は出てきません。買った日に一回だけ記録して終わりです。
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 10月15日 | 消耗品費 3,300円(課税仕入10%) | 現金 3,300円 |
3試験では、問題文の取引条件を読む
簿記の問題では、「掛けで仕入れた」「現金で支払った」など、取引の条件が示されます。請求書や領収書という書類名だけで判断せず、何をいつ受け取り、いつ支払ったのかを読み取りましょう。取引が発生した時点の記録と、後日の支払いの記録を分けて考えることがポイントです。
4実務では、書類と支払い状況を照合する
同じ取引について請求書と領収書の両方を受け取ることがあります。その場合は、取引先・日付・金額・内容を照合し、帳簿にすでに計上されているか、支払いが済んでいるかを確認します。書類を別々に保管するだけでなく、同じ取引の資料として関連づけておくと、後から確認しやすくなり、二重計上の防止にも役立ちます。
5見分け方のポイント
「ご請求金額」や「お支払期限」の記載は、請求内容や支払期日を確認する手がかりです。「領収いたしました」などの記載は、受領した金額や支払日を確認する手がかりになります。ただし、書類の名称や文言だけで決めつけず、取引内容・支払い状況・帳簿への計上状況を合わせて判断しましょう。
アオイタクト先輩、飲食店Aの11月25日の仕訳を、買掛金の支払いに直しました。買掛金_食材業者Bの残高がゼロになっていることも確かめました。
アオイほかの取引先も見直したら、同じように領収書からもう一度仕入にしていたものが2件ありました。あわせて直して、念のため質問リストにも入れてあります。
タクト先輩ほかの取引先まで見てくれたのは助かるよ。請求書と領収書が両方届く取引先は、一枚ずつ別々に入力すると今回みたいなことが起きやすいんだ。同じ取引の書類として、ひもづけておくといいよ。
アオイはい!これからは書類を見たら、まず取引の記録なのか支払いの記録なのかを考えてから入力します。